シナリオで観るかごしま物語           長野泰英

2015年06月01日

みなさん、おやっとさぁです。

今回は個人的に書き下ろした「かごしま物語」劇場版のシナリオ(初稿)を掲載しました。題して「シナリオで見るかごしま物語」。しかも今作はWEBで配信されているオリジナルとは若干異なった設定になっていますのでいつものドラマとは違った見方ができると思います。例えば登場人物の年齢を少し上げていたり、友美の一人娘由美はすでに短大を卒業しており福岡でOLをやっていたり、気丈な山元りかが泣く場面があったり・・・。主人公有馬友美を軸にその家族に焦点をあてていて50歳代にふりかかるであろう様々な現実と夢をポジティブに表現しています。ベースはホームドラマなので宇宙船が出たり車が爆発したりはしません。とはいえスクリーンで見ることを目的としてるのでお茶の間で見るテレビとはスケールも違え、ストーリーも多少大げさにしました。ですからありえないよという表現もあるか知れませんが劇映画として限られた時間に完結させなければならないためご都合主義的な強引な見せ方も仕方ないのですがそこはご理解頂きご一読頂ければ幸いです。

この劇場版のサブタイトルにもあるように“50代にしておきたい10のこと“の10のこととは

*本音で生きる。*不義理をする。*健康と向き合う。

*友情が厚みを加える。*愛を育む。*ロマンスを取り戻す。

*愛を育む。*お金で人生を台無ししない。

*家族との霹靂を解消する。*歯目をはずしてみる。

という教訓を劇中にちりばめています。

この劇場版シナリオで物語的にもものづくり的にも感じることを読み解いて頂けましたら光栄です。

なお、本来シナリオ(脚本)はドラマづくりの「設計図」です。小説と同じ「読み物」ではありません。そこらへん、くれぐれも誤解無きようご理解ください。また脚本は通常縦書きですがWEB用に横書きにしてありますことを予めご了承ください。

KAGOSHIMA MONOGATARI THE MOVIE

「かごしま物語」劇場版

50代にしておきたい10のこと(仮題)

脚本 長野泰英

企画意図

この映画はWEBドラマ「かごしま物語」の主人公、有馬友美とその家族を中心に彼女をとりまく人々の人間模様を描きます。

50代は、人生でもっとも充実した年代。いままでやってきたこと

をさらに進化させて、多くの人たちに喜ばれながら、家族とのつながり、友人を大事にし、最高の想い出をつくる時間でもあります。

また心配事も多くなる年代。50という歳は感情とうまく付き合うことが感じんではないでしょうか。テーマは「家族」。ポジティブに生きる、というメンタリティを描く大人のメルヘン映画です。

ストーリー

鹿児島に住むごく平凡な主婦、有馬友美は子供も独立し、夫、隆と

気ままな日々を送っていた。キャリアウーマンで独身のりかやセレブのひろ子ら同世代の友人の悩み事を聞くことやパート先での出来事もまた友美にとっては人生そのもの。そんなある日、娘の由美が福岡から帰ってきた。しかし由美は子供が出来たことを話せず、城山で佐根森という男と出会う。そんな矢先に友美の母親が危篤になった。迷う友美は娘とともに出会った佐根森の言葉によって苦境を乗り越えていく。しかし一難去って更なる事態が待ち受けていた。

登場人物

有馬友美(50)主人公・平凡な主婦でありながらも家族と

        人への愛情を持ち続ける人情派の妻

有馬 隆(52)友美の夫・亭主関白ながら妻を愛し、

        子供を愛し、歴史を愛するよき夫

有馬由美(20)友美の娘・福岡でOLをやっていたが帰郷する

山元りか(50)友美の親友・キャリアウーマンで独身、しかも

        勝気な性格ながら弱い一面もみせる

西沢ひろ子(50)友美の親友・典型的なセレブ主婦、

         常に冷静で的確な判断をする

米田真之介(37)友美の弟・軽薄な性分は友美を悩ますが、

         姉似で人情もろいところもある

司 隆司(23)由美の彼氏

佐根森優希(60)佐根森酒造社長・由美と同じ境遇の娘を持つ、

         落ち着いて見えるが案外女好き

桜 禧三郎(42)桜島酒造社長・佐根森酒造とはライバル、

        その佐根森酒造を買収しようと企んでいる。

川上哲夫・・・・真之介の上司・部長

和田篤子・・・・薬丸自顕流師範代

大山茂樹・・・・真之介の勤め先の広告代理店「薩広社」社長

克郎・・・・・・隆の後輩・隆にリストラの悩みを相談する

竹下・・・・・・友美のパート先の店長

房江・・・・・・友美の母

女性秘書・・・・佐根森酒造社長秘書

受付係り・・・・桜島酒造

桜 紘一郎(20)桜禧三郎の息子

佐根森英恵(22)佐根森優希の娘

初老の男性サラリーマン・・・歩道で友美に声をかけられる

バイトの女性・・・友美のパート先の同僚(大学生)

パートの男性・・・友美のパート先の同僚

スタッフ・・・・・〇×結婚相談所

 

シナリオ初稿

1・天文館~港大通り公園

    スクランブル交差点。

    雑踏の中をせわしく目的地へ向かって行き交う

    人、人、人・・・・

    ベンチでくつろぐ老夫婦。

友美(オフ)「皆さん、おやっとさぁです。

有馬友美といいます。鹿児島に住むごく平凡な主婦です。

人生の90%が30代で決まる、と言われて子育てに

      勤しんだ20年間。

愛する子供たちも成長して皆成人を迎え、夫婦も第二

の人生を歩んでいかなければなりません。

50代は来るであろう老後がハッピーなものになるか、

惨めなものになるかはここで決まるのです」

2・電車通り

    路面電車がゴオッと走り去っていく。

    日傘をさして横断歩道を来る中年女性。

    有馬友美。

    信号が点滅をはじめ、慌ててかけてくる60代の初老の

    男性サラリーマン。

    友美を追い抜き歩道へ滑り込んで息を切らしている。

友美「(男性に)あの?どこか具合でも?」

男性「(荒息で)大丈夫です・・・」

    うずくまったままの男性。

友美「大丈夫ですか?」

男性「(立ち上がり)はぁ~、歳にはかなわんね」

友美「無理なさってはいけませんよ」

男性「50代はまだまだって思ってたのに60になったら

  とたんに無理ができんごっつなっとな」

友美「(微笑んで)」

男性「あいがとごわした」

     腰を押さえながら去っていく男性。

     見送る友美。

友美(オフ)ほんの2~30年まえまではサラリーマンの定年は

    55歳だったのに今は50代が老後の生活なんて考えられ

    ない時代です。

    だからわたしは思うんです。

    50代からでも、まだまだ夢を追いかけることはできるん

    だってこと」

3・メインタイトル

    噴煙を上げる桜島と観光名所あれこれ。

    以下主要キャストがオープニングテーマに沿って流れる。

    スーパーで買い物をしている友美。

    部下と同行のリカとすれ違い様に手を振る友美。

    停車していた車のひろ子から呼ばれる友美。

    路上で電話中の真之介を後ろからつつく友美。

    会社デスクの隆、家族の集合写真が待ち受け画像。

    夕陽。

4・有馬家・表札

友美(声)「只今!」

5・同・キッチン

    今夜の食材をどさっとカウンターに不作法に置く友美。

友美「あ~重たかった!」

    来る隆。

隆 「おかえり(食材を覗いて)今夜はないけ?」

友美「あなた最近虫歯が痛むって言うから湯豆腐と野菜

  炒めがいいかなって」

隆 「おいもやがては入れ歯かね」

友美「そうならないように気をつけてね」

隆 「ところで実家のお母さん、ぼちぼち施設を考えたほうが

  よかねかち思たっどん」

友美「最近物忘れひどいし、正直心配なのよ」

    電話が鳴る。

友美の視界から消える隆。

6・受話器をとる隆

隆 「はい、有馬です。お~、なんよ?

   えっ?リストラ?!お前がや!・・・そいは辛かったやろ」

7・キッチン

    野菜を切っている友美。

    足取り重く来る隆。

友美「(まな板から目を離さず)誰?」

隆 「あしたん晩は飲んけいたっくっで」

友美「?」

隆 「後輩の克郎君がリストラされたち」

友美「あら?お子さんがまだ大学生じゃなかった?」

隆 「まだまだ銭がいっど」

8・居酒屋

    カウンターで並んで飲んでいる隆と克郎。

    元気の無い克郎に熱燗を注ぐ隆。

隆 「こいからいけんすっと?」

克郎「仕事を見つけんならね」

隆 「年金暮らしまではまだまだあっでな」

克郎「よかったよ」

隆 「ないが?」

克郎「一人娘やったであと1年、なんとかきばれば」

隆 「そげな前向きなところがわいのよかとこいじゃ」

克郎「隆のとこは二人とも卒業したとけ?」

隆 「下の娘が今年な。今は福岡でOLしちょ」

克郎「子ドンに手がかからんくなったで楽やっどがな?」

隆 「ないごてよ!次は結婚やっどがな」

克郎「わいもまだまだ気が抜けんな」

隆 「こうやってわいといっでん会えるちゅうことは

  学生だったころの自分に会うちゅうことやっでやな」

克郎「剣道部の頃がなつかしかね」

隆 「30代や40代の頃は同窓会でもどひこ出世したとか

  活躍したとかそげんことばっかいで嫉妬や競争心を煽るこっ

ばっかいやったどん、

今はそげな過去を楽しむことも話題にすっごなったな」

克郎「・・・・お互い今日があることに感謝やな」

隆 「(克郎を見て)可能性はまだあっど」

克郎「(隆を見て)今日はあいがとな」

    熱燗を飲み干す二人。

    大きく吐息。

9・甲突川の河面が揺れる

10・鴨池新町の多目的ビル群

    朝の出勤でサラリーマンやOLが行き来している。

11・同・隆の勤め先・エントランス

    出勤してくる隆。

    すれ違う同僚らに挨拶を交わす隆。

隆 「おはようございます」

    真之介の甲高い声。

真之介(声)「兄さん、おつかれ!」

隆 「あれ?真之介!」

真之介「おっと、なんでここにいるのか?って言いたいんでしょ?」

隆 「(頷く)」

真之介「兄さんの会社とうちの会社の共同事業が決まって」

隆 「まこて!」

真之介「兄さんとこの創立30周年を記念して鶴丸城を再現すると

  いくらかかるか試算する、というのがあったんです」

隆 「ほぉ~歴史好きの社長が考えそうなこっじゃ」

真之介「こりゃ面白い!って早速全社あげての行事になってね」

隆 「そいで、お前の広告代理店とおいげえ○○商事が

手を組んだっちゅうわけね」

真之介「兄さん企画営業でしょ?なんで知らなかったの?」

隆 「それっぽい話は聞いちょったどん、予算がかかりすぎるち、

  どうせ企画倒れになっち思たで」

真之介「幕末おたくの兄さんにはよだれが出るような話じゃん?」

    エレベーターホールから叫ぶ川上。

川上「お~い!米田!先行ってるぞ!」

真之介「課長すぐ行きます!」

隆 「(時計を見て)そいなら」

    駆けていく隆。

    真之介もエレベーターへ駆ける。

 

12・いづろ交差点

    山形屋方向から来るスーツ姿のキャリアウーマン。

    山元りか。

    携帯電話が鳴る。

    りか、立ち止まって。

りか「山元です。はい。ですから、その契約の件はお宅の不手際

   じゃなかったんですか!はい、よろしく!!(切ると間髪

   入れずに再びコール)はいっ!山元ですっ!」

電話の声「独身女性の味方○×結婚相談所です。山元りか様でしょうか?」

りか「(携帯を離して)今電話こられてもこまるんだけどな」

りか「(すまして)いつもお世話になっております・・・はい、はい」

13・鹿児島中央駅前ロータリー(夜)

    あるビルの窓。

14・〇×結婚相談所

    待合室でそわそわしながら坐っているりか。

    スタッフが呼ぶ。

スタッフ「お待たせしました。カウンセリングは初めてですね」

    いきなり立ち上がり言葉に詰まりながらも出ていくりか。

りか「ご、ごめんなさい!」

スタッフ「!?」

15・公園のブランコ

    ひとり揺れているりか。

    大きく溜め息。

りか「・・・なんでこうわたし男運がないんだろ?」

    買い物袋を両手に持ち、公園脇を通る友美。

    りかの姿に気づいて近寄る友美。

友美「りか?」

    しまった!という顔のリカ。

友美「あんたこんなとこで一人で何沈んでんの?」

りか「なんでもない」

友美「ひょっとして泣いてた?」

りか「泣いてないわよ」

友美「あんたが一人でブランコしているときは悲しいとき~

  って昔から決まってんの」

りか「はいはいそうですか!」

友美「当てようか?・・・フラれた!」

りか「(ガクッとうなだれる)」

    友美も隣のブランコに座る。

友美「どうしたの?親友に話してみ?」

りか「あたしとしたことが不覚だった。

  あれじゃ結婚詐欺と同じじゃ」

友美「かかったのは相手のほうだったりなんかして」

りか「ばか!真剣に聞かんか!」

友美「また若い子に手を出したんでしょ?」

りか「違う!今度は5つしかかわんないわよ」

友美「りかの性格だもん。高校の頃から変わんないね」

りか「あっちの方から付き合ってくださいって言ったくせに

  じゃあ結婚する?って段になったら結婚相手はもう

居ますだって」

友美「男って40代でも9割以上が20代の女性と結婚したがる

  んだってこの前テレビで言ってた」

りか「確かに当たらずとも遠からず。

  そりゃあここまで待ったんだからとか、若いほうがいいに

  決まってるわよ。二言目には子供がほしいからって・・・」

友美「男はそう考えるわね」

りか「いまさらお金払って結婚相談所登録してもこれといった

  男性を紹介なんてしてくんないわよね」

友美「でもりかはいいな~」

りか「は?」

友美「いつまでも恋できてさ」

りか「(その言葉にハッとなる)恋?」

友美「わたしなんかとっくに卒業しちゃってるし、

  もうあんたみたいにはロマンスなんて感じれない歳に

  なっちゃった」

りか「友美・・・」

友美「りかみたいに自分の中の男の部分と女の部分を捨てず、

  セクシーな雰囲気を持っている人もいれば、わたしみたいに

  完全にオジサンオバサン化してセクシャリティがほとんど

  抜け落ちてしまった人もいるし」

    頭上に輝く満月を望む友美。

りか「(友美の瞳を見て)友美・・・」

友美「心から人生を楽しんでいる人はロマンスの香りが50代に

  なってもまだ残ってる人のことなんだよね」

りか「ロマンスねぇ」

友美「時々思うの。わたしもあんたを見習っていきたいなって」

りか「(目が潤む)・・・」

友美「りか。・・・だからさ、ガンバロ・・・ね」

りか「うん。(感動して友美に抱きつく)わ~ん、やっぱ持つべきものは友だわ」

友美「(瞬間)あっ!夕食の準備!!」

    慌ててりかから離れて小走りに去っていく友美。

友美「じゃあねリカ」

りか「友美の主婦なのね・・・(見送る)」

    満月がリカを照らす。

りか「さてと、明日からも仕事と男の両立がんばるぞ!」

16・さつま揚げ店

    パート業務の友美。

    商品を陳列台へ並べている。

    若いバイトの女性(学生)が手招きしている。

バイトの女性「(小声で)有馬さん、有馬さん!」

    気がつき近寄る友美。

友美「なに?」

バイトの女性「先月配属された店長ってあちこちに借金

   つくって家庭崩壊寸前って噂知ってます?」

友美「竹下店長?」

バイトの女性「前の店ではパートにもお金借りてたって聞きました。

   わたしの同期の子が話してました」

友美「え~ほんと?わたしたちも気をつけなきゃね」

    そこに来る竹下。

    気づいてそそくさと作業をするふたり。

竹下「有馬さん勤務終わりにバックヤード来てくんない?」

友美「はい」

竹下「ちょっとだけお願いごとがあってさ」

    軽い調子で言い捨てると事務所へ消える竹下。

バイトの女性「まさかのおねだりだったりして」

友美「大丈夫でしょ。給料の少ないわたしたちからは」

バイトの女性「旦那さんがちゃんとしたサラリーマンだから

   特に経済的にも安定してる人を狙うみたいですよ」

友美「(やや心配になり)ねぇ、もっと詳しく教えてくれる?」

17・同・バックヤード(夕方)

    待っている竹下。

    私服になった友美が来る。

友美「店長お待たせしました」

竹下「彼女は?」

友美「先に帰りました」

竹下「(入口側に立ち)そうか」

友美「で、用ってなんでしょうか?」

竹下「実は家内が病気でね・・・癌なんだよ」

友美「それは大変ですね」

竹下「手術に莫大なお金がかかってさ」

友美「それなら社長に掛け合ってみたらどうです?」

竹下「立場もあるしね。・・・きっと返すから少し工面してくれ

  ないだろうか?パートの君にお願いするのも気が引けるんだが。

  頼む!ほんの10万、否、5万でいいんだ」

友美「わかりました・・・・と、言いたいところですが、

  店長、本当に奥さん病気なんですか?」

竹下「そ、そうだけど」

友美「店長おいくつでしたっけ?」

竹下「55だけど」

友美「本当に奥さんが癌ならほかに治療費を工面する手立てはある

  んじゃないでしょうか?保険とかどうなんですか?」

竹下「だから癌保険には入ってなかったんだ」

友美「・・・・奥さんが癌だなんて嘘でしょ?」

竹下「!」

友美「お子さんもちゃんと大学まで出してきたんじゃないですか?

  聞きましたよ。お子さん東京出ていったきり戻ってこないそう

  ですね?お子さんも悪いかもしれないけど、父親がもっと

  悪い気がします。お金さえあればなんとかなる。そんな衝動

  から投機的な家庭経済しか切り盛りできなかったんじゃない 

  ですか?お金で親子の愛も買えると思ってたんじゃないの?」

竹下「なんで君にそんな言われなきゃならないんだ?」

友美「公務員時代、万引きが原因で懲戒免職されたそうですね。

  この会社入って自分の立場を利用して

何人ものパートや社員から借金しているそうじゃないですか!」

竹下「!」

友美「ちょっとずるいことしたり、人の信用を裏切るようなこと

  したりして、結局はそれが原因で経済的に自滅してしまう人

  もいるんですよ」

竹下「だからなんだよ!」

友美「店長、あなたのことを言ってるんです!」

竹下「(絶句)・・・・」

友美「お金で人生台無しにしないでください!

   奥さんや子供のことも考えたらどうなんですか?」

竹下「・・・・」

友美「旦那も決して高給取りじゃないし、家のローンも残ってるし

  子供たちの結婚式もちゃんと出してやりたいし、年金だって

  きちんともらいたいし、平凡な私たちも一生懸命生きる

  ために頑張っているんですよ!」

竹下「(打ちひしがれて)・・・すまん」

友美「じゃあ、わたし帰ります。お疲れ様でした」

    出ていく友美。

    一人残っている竹下。

    肩を落としたまま動かない。

    入れ替わりで夜間パートの男性が来る。

パートの男性「お疲れ様です!」

竹下「(頭を上げず)お疲れ・・・」

18・市電の中(夜)

    帰宅する乗客でいっぱいだ。

つり革に掴まり揺られている友美。

    少し気疲れしている。

友美「(ひとりごと)ちょっと言い過ぎたかな」

19・有馬家・寝室

    布団が並ぶ。

    寝ている隆。

    隣に友美。

友美「(天井を見詰めたまま小さな溜め息をつく)はぁ~」

隆 「・・・・・今日何かあったとか?」

友美「なんだ、まだ起きてたんだ」

隆 「晩飯、いつもより塩っけが多かったど」

友美「パート先でいろいろあってね」

隆 「無理して勤めんでんよかど、いまでも十分暮らして

  いっがなっどが」

友美「うんん、お金じゃないの。

  なんか人の笑顔が見たくてね」

隆 「・・・・・」

友美「いまのパート、出会いがあるから楽しいし、

  働くというより、趣味みたいなもんかもね」

隆 「趣味か・・・」

友美「牛乳瓶のふたとかお箸の袋集めとか無駄なことみたいだけど、

  違う次元の世界を持つって発想の転換にもなって、それが

  仕事のヒントにもつながったりするでしょう」

隆 「趣味を持つことをそげな風に考えたこっもなかった。

  やることがない老後よりもライフワークを持つべし・・・か・・・」

友美「子供ももう出ていっちゃったし、結婚したときのように

  二人っきりになってまた次の目標を探しているんじゃない

かって思うようになってきた・・・なんとなくだけど」

隆 「おいも身に着く趣味を見つけんならね」

友美「たかさん」

隆 「友美」

    布団の中で手をつなぐ。

    目を閉じる友美。

    天井を見つめている隆。

20・薬丸自顕流稽古場

    さかんに激しい奇声が聞こえる。

    数人の男たちが竹刀を振りかざし突進していく。

    その中で話している隆と篤子がいる。

篤子「有馬さんが!?薬丸自顕流の本を出したいと?」

隆 「知り合いの好で。篤子さん、なんとか」

篤子「父が頭が固いのはよくご存知でしょ?」

隆 「薬丸自顕流の師範である和田先生にぜひとも協力して

  いただきたいと。

娘さんのあなたからもぜひ呼びかけてほしかとです」

篤子「でもなんで急に本なんか書きたいと思ったんですか?」

隆 「古流剣術は歴史ファンにとっても鹿児島にとっても永遠に

  継がれなきゃならない伝統だと思うんです。

  特に近代日本を形成した明治維新はこの薬丸自顕流でたたき

  あげられたといってもいい。

  いま弟が鶴丸城を再現するというイベントをわたしの会社と

  合同で企画しています。

  おいもなにか歴史に残ることをしたくなって」

篤子「わかりました。これも何かの縁です。

  わたしにできることはしますね」

21・有馬家・隆の机

    無造作に広げられた薬丸自顕流の関係書籍。

    洗濯ものを抱えて通りがかる友美。

    立ち止まって見ている友美。

友美「・・・始まったね、たかさん」

22・ベランダ

    干し物を吊るしている友美。

    奥から携帯電話が鳴り響く。

友美「はいはいはい」

    手を止めて携帯をとる。

由美(声)「お母さん」

友美「由美!仕事ちゃんとやってる?」

23・福岡・天神

    娘の由美が電話している。

由美「うん。あのね、実は大事な話があるんだけど・・・」

友美(声)「大事な話?」

由美「こんどの連休帰ってこようと思うの」

友美(声)「そう」

由美「そのときに紹介したい人がいてね。一緒に行ってもいい?」

24・電話の友美

友美「会社の友達?」

由美(声)う、うん。ま、まあそんなとこ」

友美「(何かに気づいて表情が曇る)わかった。いいわよ、おいで」

25・電話の由美

由美「ありがとう(電話を切る)」

    隣に立つ若い男性を見て微笑む由美。

  •    *   *   *   *   *

    なにかを思っている友美。

    再び電話が鳴る。

    びっくりして通話ボタンを慌てて押す。

友美「もしもし?あ、なんだ、ひろ子!えっ?ランチ?いまから?う、うん、いいよ」

26・並ぶランチ

    こじゃれたカフェ。

    ランチをする友美とセレブな恰好の女性、西沢ひろ子。

友美「お父さまがお怪我されたの!?」

ひろ子「でも大したことはなくて、うちでよろけて階段から

   転げ落ちちゃったの」

友美「命には?」

ひろ子「大丈夫。それどころか病院でもピンピンしてるし。ただ、倒れたときは久々に一瞬ひやっとしたけどね」

友美「あんたいつも冷静ね、高校の頃から全然かわんない」

ひろ子「なにがあっても落ち着いて行動する。これがわたしの

   モットー」

友美「金持ち喧嘩せずってか?」

ひろ子「そんな言い方無いじゃない?じゃあ、ここの勘定割り勘ね」

友美「え~!おごってくれるって言ったじゃん!」

ひろ子「へへへ・・・嘘、冗談よ」

友美「うちの母も歳だからってそろそろ施設へ入れようか 

  どうしようか迷ってるのよ」

ひろ子「お父さん3年前にお亡くなりになったのよね?」

友美「それから加速的にボケちゃって」

ひろ子「子供のこと、親のこと、自分たちのこと・・・

  考えることだらけで忙しいね」

友美「お互いね」

ひろ子「あ~歳はとりたくないわ」

    フォークでサイコロステーキを突きいっきに頬張る。

    唖然となる友美。

    その時かすかな震動。

    テーブルのコーヒーカップがカタカタと無気味に鳴る。

    顔を見合わせる友美とひろ子。

友美「桜島!」

ひろ子「最近多いね?」

    再び黙々と食べ続けるひろ子。

ひろ子「そうだ!桜島で思い出した。

今日友美を呼んだのは佐根森酒造の社長さんから

   個人的に頼まれ事があったからだったの」

友美「さすがセレブ。顔が広いね」

ひろ子「わたしの父と佐根森社長が知り合いだからその関係でさ、

   佐根森社長は早くに奥さん亡くして今は娘が面倒みてるらし

   いのね。その娘さんが今度結婚するそうなの」

友美「へ~娘さんおいくつ?」

ひろ子「22」

友美「けっこう遅くに出来たんだ」

ひろ子「女好きでは有名な社長さんだしね。奥さんも20位歳下

   をもらってね。

そんな社長にとっては目に入れても痛くない愛娘なのよ」

友美「相手は?」

ひろ子「そこよ問題は。相手が桜島酒造のご長男」

友美「ふ~ん、で?」

ひろ子「桜島酒造と佐根森酒造は犬猫の関係で先代から喧嘩して   

   きたライバル酒造で有名よ。そこの御曹司と結婚なんて

   佐根森さんが許すと思う?」

友美「大変ね。でも、それをどうしろって言うの?」

ひろ子「娘さんお腹に子供もいるんですって」

友美「(あまり気にせず)そりゃ困った」

ひろ子「知ってるでしょ?桜島酒造はわたしのやってる料理教室のゼネラルスポンサーでもあるのよ」

友美「だから何が言いたいの?」

ひろ子「この縁談を壊すにはどうしたらいいかって相談」

友美「そういうやばい相談はおことわり」

ひろ子「友美!」

友美「あんたの立場もわかるけど、結婚するのは若いふたりでしょ?

  わたしたちがでしゃばることないと思うけどな」

ひろ子「らしくないね~らしくない。

困ってる人がいたらいつも助けてくれる友美らしくない!」

友美「それとこれとは話の次元が違うわよ」

ひろ子「そうかな~」

友美「(心ここにあらずな表情で)結婚・・・お腹に子供・・・・」

27・沿線を電車が走る(夜)

28・有馬家・隆の机

    薬丸自顕流の書籍を読みながらノートを取っている隆。

    来る友美。

友美「あなた、ちょっといい?」

隆 「(動かず)なんよ?」

友美「由美のことなんだけど」

隆 「(見て)なんか仕事で迷ったとか?」

友美「そうじゃなくてね」

隆 「病気でもしたとか?」

友美「じゃなくて・・・・」

隆 「なんよ?」

友美「なんていうか・・・女の感ってやつかな・・・」

隆 「やっでなんよ?」

友美「彼氏が出来たんじゃないかしら?」

隆 「!か・・・彼氏?」

友美「(頷く)」

隆 「去年短大を出たばっかいで、まだ社会人1年生やっとに」

友美「本当のことはわかんないわよ。今日電話がきてさ、急に

  今度の連休に合わせたい人がいるから帰るって」

隆 「かれし・・・」

    とっさに携帯を取り出しダイヤルを押す。

    刹那その手をつかんで止める友美。

友美「(首を左右に振り)・・・」

    思いとどまる隆。

友美「考えすぎかもしれないじゃない?

  由美は大丈夫。わたしたちの子だもの」

隆 「じゃっな」

    再び机に向かう隆。

    複雑な表情で隆の後姿を見詰める友美。

29・福岡・博多駅

    構内の発券機前で誰かを待つ由美。

    傍には大きな旅行ケース。

    来る若者、司隆司。

    笑みを浮かべて手を振る由美。

由美「もう、遅い!」

隆司「(あまり乗り気がしない)由美・・・」

由美「何?」

隆司「鹿児島行ったら両親と会うんだよな?」

由美「もちろん!」

隆司「やっぱ・・・・・会わなきゃだめ?」

由美「約束したよね?ちゃんと言ってほしいの」

隆司「・・・・(嫌々ながら頷く)」

30・新幹線が走っていく

31・鹿児島中央駅・改札前

    を来る営業途中の真之介と川上。

    旅行ケースを引きずる由美と隆司がすれ違った。

    気づく真之介。

真之介「あれ?あの子どっかで・・・・(思い出し)由美ちゃん?」

川上「米田、どうした?」

真之介「いや、なんでもありません」

    人違いと思いつつも気になる真之介。

32・有馬家・リビング(夜)

    食卓にいつもと違い豪華な食事が並ぶ。

    時計を気にしながら落ち着かない様子の友美。

    時間は夜の10時を回っている。

友美「遅いな・・・」

隆 「(やってきて)由美はまだや?」

友美「7時には帰るってメールがあったんだけど」

隆 「友だちん家にでん行っとんじゃなかか?」

友美「それでも遅い気がしない?電話してみようかな」

    電話をかける友美。

    留守電になる。

友美「さっきから何度もかけるのに出ないのよ」

隆 「待っちょけばよかが」

友美「さっきとは反対に気にしなくなったわね」

隆 「気にはなっどん・・・・」

    その刹那電話が鳴る。

友美「(即座にとって)由美?・・・なんだ!真之介か・・・」

33・真之介の会社

    電話の真之介。

真之介「姉さん、由美ちゃん居る?」

34・電話の友美

友美「それがね、7時には帰るって言ってまだなのよ」

真之介(声)由美ちゃんなら男性と一緒に中央駅に居るところ

   を見かけたけどね」

友美「いつ?」

35・電話の真之介

真之介「外回りのときだったから・・・3時くらいだった

かな・・・」

36・電話の友美

友美「(気にしながら)ありがとう・・・うんん、大丈夫だから」

    電話を切る。

    新聞を見ている隆。

隆 「チェストォ!」

    突然大声を上げて両手を振りかざす。

友美「(驚く)びっくりしたぁ!大声出さないでよ!何時だと思ってんの?」

隆 「由美のことが心配じゃったろ?由美も大人やったっで大丈夫」

友美「仕方ない・・・食べましょ。もう冷めちゃったけど」

37・有馬家・玄関(翌朝)

    来る人影。

    チャイムを鳴らす女性の指。

38・同・玄関(中)

    戸が開く。

    うつむき加減で立つ由美。

    来る友美。

友美「由美!あんた昨夜帰ってくるって・・・待ってたのよ!」

由美「ごめん・・・なさい」

友美「ま、そんなとこ立ってないであがんなさい」

    由美の後ろから出てくる隆司。

    声に出さず軽く挨拶する隆司。

友美「この方は?」

由美「司 隆司さん」

友美「どういうご関係?」

由美「・・・福岡で知り合ったの」

友美「あがって」

39・同・リビング

    荷物もそのままでじっと座って動かない由美と隆司。

    飲み物を持ってくる友美。

友美「まずはお帰りなさい」

由美「・・・・うん」

友美「司さん、でしたっけ?お仕事はなにをなさっているの?」

隆司「・・・・あの」

由美「建築関係」

友美「設計士さん?」

由美「ちょっと違うけど・・・」

友美「由美とは福岡で知り合ったの?」

由美「そう、大学時代の友達の紹介で・・・」

友美「(黙っている隆司に何かを感じて)司さんに尋ねているの」

由美「・・・・・」

友美「由美とはどういう関係?」

隆司「(いたたまれなくなり)あの、俺、やっぱ、帰ります」

    咄嗟に荷物を抱えて出ていく隆司。

由美「隆司!」

    鞄をとって追う由美。

友美「由美!」

40・自宅近くの道

    先を行く隆司。

    追いつく由美。

由美「どうしたの?隆司」

隆司「おれ、福岡帰るちゃ」

由美「じゃあこれからどうなるわけわたしたち?」

隆司「・・・・(由美のお腹を見下ろして)好きにすればいいけん」

由美「勝手なこといわないでよ!」

隆司「じゃあ、俺にどうしろって?」

由美「正直に言えばいいがね」

隆司「本当はニートだってか!たまに鳶職で食いつないでるって!」

    近くでクラクションが鳴る。

    見る由美と隆司。

    りかが自家用車の中から手を振っている。

41・走るりかの車の中

    リアシートに座る由美と隆司。

    ハンドルを握るりか。

りか「どっかで見た人がいるな~と思ったら由美ちゃんだったし」

由美「山元さん久しぶりでした」

りか「あんたが短大に行く前以来だっけ?2年ぶりか」

由美「ですね」

りか「ちょっとは大人になったけ?」

由美「ま、まあ・・・・」

りか「で、お隣さん由美ちゃんの彼氏?」

隆司「・・・・」

由美「そんなんじゃ」

りか「私の目はごまかせないよ。・・・で、二人で何してた

  わけ?深刻そうな雰囲気だったけど」

由美「・・・(隆司と気まずそうに顔を見合わせる)」

りか「当ててみようか?あんたたち友美と何かあったでしょう?

  駆け落ちでもしてるんじゃないの?」

由美「そんなこと」

りか「ちょっと寄り道していい?」

42・大きくカーブしていくりかの車

43・喫茶店

りか「なにぃ!あんた妊娠・・・(声を小さくして)で、友美はそのこと知ってるの?」

    首を左右に振る由美。

りか「ちゃんと話さないとさ」

由美「そのことで帰ってきたんです」

りか「確かにお互い二十歳は過ぎてるし、子供扱いされるのは

  イヤかもしれないけどさ、生活のこととかちゃんと考えてる?」

由美「わたしも働いてるし」

りか「(隆司に)あんたは?」

隆司「働いてますよ」

りか「説教できる立場じゃないけどさ友美と同級生のよしみもあっ

  て親友として言わせてもらう。

  結婚は二人の問題だけに思えるかもしれないけど、身内や親戚、

  ひいては友達にまで影響があるのよ。結婚がゴールじゃなくて

  人生のスタートなんだからね、まして子供が居れば尚更よ。

いろんなこと犠牲にできる自信もってないと結婚生活なんかできっこないからね」

由美「わかりました」

りか「あ~あ、かっこいいこと言っちゃったけど私だって結婚したいわよ~」

由美「リカさんがまだ結婚してないのはどうしてなんですか?」

りか「大きなお世話よ。

  もう何十年も一人でいるとそれに慣れて自分の生活圏に他人が入ってくると調子が狂うのよ。相手を見る目もここまでくるとず~と肥えてちゃってるからこの人いいなって思ってもお付き合いにまで発展はしないわけ」

由美「リカさんも大変ですね」

りか「よほど自分のライフスタイルを変えないとこれから先パートナーを見つけるの難しいでしょうね・・・・ってなんであんたたちわたしの悩み話さなきゃなんないのよ!」

44・有馬家・リビング(夕方)

    赤い夕焼けがブラインドから差し込んでいる。

    来ているひろ子。

    持参した郷土菓子を取り出す。

ひろ子「むしゃくしゃしているときはじゃんじゃん食べるのよ」

友美「そんな気になれる?」

ひろ子「由美ちゃんの連れてきた彼氏って婚約者かな?」

友美「旦那が聴いたら憤慨するわ」

ひろ子「由美LOVEだもんね」

友美「でも、あの子ただの男友達には見えなかった」

ひろ子「ひょっとしてひょっとするかもよ」

友美「(勘づく)まさか?」

ひろ子「母親として締めるところは締めなきゃ」

友美「リカにも相談してみようかな~」

ひろ子「リカは男への探究心が旺盛だから案外相談相手になるかもね」

45・字幕:ところが・・・

46・カフェバー

    来ているりか、友美、ひろ子。

友美「はぁ!?昨日二人と会った!」

りか「うん」

ひろ子「その二人その後どうしたの?」

りか「泊まるとこないって言うから昨夜はわたしの家に泊めてあげた」

ひろ子「呆れた・・・」

友美「もう、それ早く言ってよ。由美、何か言ってた?」

りか「あの子、妊娠してるわよ」

ひろ子「えぇっ!?」

友美「!」

    頭を抱えてふさぎ込む友美。

友美「まさかと思ってたけど、嫌な予感が的中したわ」

りか「でもよかったじゃん。家族が増えるし。友美おばあちゃんだ」

友美「どうしよう?」

ひろ子「結婚式はどこでやるの?うち、いい式場教えてあげようか?」

友美「待って!納得いかない。ねえりか、あの二人あんたん家まだいる?」

りか「私が出勤前に出てった」

47・城山展望台

    フェンスから錦江湾を望む由美。

    展望席でじっと動かない隆司。

由美「わたし着替え置いてきちゃったからどうするの?」

隆司「だから俺と福岡帰ればいいじゃんか!」

由美「お腹の子どうなるの?」

隆司「胎ろせよ」

由美「(!)なんで?」

隆司「どうせ望まない妊娠だったんだろ?」

由美「なんで!簡単に言うわね」

隆司「・・・・」

由美「責任とってよ!」

    思いっきり由美をひっぱたく隆司。

    倒れる由美。

    近くの望遠鏡で市街地を見ていたランバンハットの男が由美を抱きかかえて起こす。

男性「大丈夫けね?」

由美「痛っ・・」

   隆司が去ろうとするのを制する男性。

男性「おまんんさぁおなごを殴っせ~そんまま立ち去ろうとしやったな?」

   ランバンハットをとる男性。

   佐根森優希。

佐根森「そげなことは男のすっこっじゃなかど」

隆司「関係無いだろ」

佐根森「(由美に)お腹に赤ちゃんがおったっどがな?」

由美「(頷く)はい」

佐根森「(隆司に)おなごには優しくしてやらんと」

隆司「・・・・・」

    走り去る隆司。

佐根森「お~い!」

由美「いいんです。すみませんでした・・・」

佐根森「名前は?」

由美「有馬由美です」

佐根森「そ~な。さっきの男は(小指を立てて)こいな?」

由美「(頷く)」

佐根森「あたや、佐根森ちゅうしがない酒屋の親父や」

由美「佐根森さん。ありがとうございました」

佐根森「怪我は無かな?」

由美「もう大丈夫です」

  •      *    *    *    *

    同・ベンチ(時間経過)

    並んで座っている佐根森と由美。

佐根森「あたいげえもなおまんさあと同じくらいの娘がおっせ~

  いま妊娠中じゃっと」

由美「娘ってお孫さんのことですか?」

佐根森「ないがよ!いや、あたいが40のときに初めて出来た子で、

  こん子を産んでから家内はすぐに死んでしもた。

  やっで娘は母親の愛情を知らんまま大人になってしもてな、

  こん子には不自由をさせちゃいかんと大事に育てたつもりやっどん、よりによってライバル会社の若造と一緒になっしもた。

  こいも運命やればち自分に言い聞かせたどん、やっぱい納得がいかんぢな、なんとかこん結婚を止めさせたかち思たっどん。

  二人は思いのほか愛し合っちょっでいけんしようもなかとな」

由美「佐根森さんも苦労されてきたんですね」

佐根森「さつきの男性とはおまんさぁも好きで一緒になったとやっどがな?」

由美「(頷く)」

佐根森「しっかり親を説得しっせ~幸せな家庭を築かんとね。

   親御さんもそいを願っちょはずや」

由美「佐根森さん、いや、佐根森社長さん、

ありがとうございました」

佐根森「幸せにならんにゃいかんど」

48・有馬家・玄関(夕方)

    一台の車が停車する。

    中から出てくる佐根森と由美。

由美「(佐根森を誘導して)ここです」

    家から出てくる友美。

友美「由美!あんたどこいってたの?」

    飛び出してくる隆。

隆 「由美!」

    友美、由美を叩こうと手を振りかざす。

    制する佐根森。

佐根森「いっと待っちゃい。今まで誘ったとはあたいじゃ」

隆 「どなた様でしょうか?」

佐根森「佐根森酒造の佐根森と言います」

隆 「あん佐根森さん!」

友美「桜島酒造の御曹司と結婚する?」

隆 「は?(あなたと御曹司がという勘違い)」

佐根森「うんにゃ!あたいが結婚すっとじゃなかでな」

隆 「まさか、ですよね~」

佐根森「(友美に)やっどんないごてそんことをおまんさあが

  知っちょっとな?」

49・同・リビング

    居る佐根森。

    隆と友美も居る。

佐根森「西沢さんと親友ちな、そいは偶然じゃった」

友美「ひろ子、いや西沢さんからご子息の結婚を取り消させる

  にはどうしたらいいかって相談されてまして、ひろ子も失礼

  よね」

佐根森「あたいがひろ子さんの親父さんに頼んだわけやっで責任は

   あたいにあっ」

隆 「でも、相手が桜島酒造のご子息とはね」

佐根森「皮肉なもんでさぁ」

友美「どうするおつもりなんですか?」

佐根森「一部では政略結婚とか言われおっどん、

  あたやそげんこっは関係なかち、二人が幸せならそいでよかち

  思うようになってな。親の体裁や見栄がどうのこうのじゃなく、

  そいにこいから生まれてくる子供には何も責任は無かでやな」

友美「・・・・・」

隆 「・・・・・」

佐根森「話は違ごどん、由美ちゃんのことは分かってくいやらんどかい?」

    顔を見合わせる困った様子の隆と友美。

    そこに固定電話が鳴る。

    席を離れる友美。

50・電話の友美

友美「もしもし・・・はい、えっ?(表情が硬くなり)わ、わかりました。すぐ向かいます!」

51・同・リビング

    慌てて戻る友美。

友美「あなた、お母さんが!」

隆 「どげんしたとか!?」

友美「倒れた」

    見る佐根森の表情も曇る。

52・個人病院の表

53・同・病室

    ベッドに房江、眠っている。

    点滴をしている。

    傍らの椅子に、友美、由美が掛けている。

    隆が入ってくる。

    友美、そのまま見迎える。

隆 「(声を抑えて)しばらくは様子を見ようち先生が」

    頷く友美。

友美「(溜め息をつく)は~。お母さんも入退院を繰り返して

  ばかりで、そろそろどこかにって思っていた矢先、これだもの。

  もっと早く動いていたらね~」

隆 「もう、そいは言うな」

由美「おばあちゃん、いつから悪いの?」

友美「由美が短大合格した日に膵臓に腫瘍が見つかってさ」

由美「じゃあ、もう二年経つんだ」

友美「お父さん亡くしてお母さん一人で頑張ってさ。

  わたしの言うこと聞いとけばこんなにならなかったのに」

由美「その腫瘍ってどうなったの?」

友美「手術でなんとかできたんだけど」

隆 「この歳やっでな」

友美「入院しても家に帰るって聞かないもんだから、無理して

  生活しててね。時々様子は見てたんだけど」

54・夜の道

    隆、友美、由美、帰る。

    深夜の道にたった3人だけ。

    靴音が闇のしじまにひびく。

友美「お母さん、あまり長くは無いかもしれない」

隆 「実家もあとあとを考えんとな」

友美「・・・最後にお母さんに由美の花嫁姿見せてあげたいな」

由美「お母さん!」

友美「お母さん、由美が生れたころ由美をいつもだっこして

  由美はわたしが育てる!なんて言ってたのよ。

  まるで自分の子供みたいに」

隆 「(渋い顔をして)まだ早かち思うけど」

友美「(由美に)お母さん、あんたが妊娠してることも知ってた」

隆 「(驚いて)なんち?初耳じゃっど!由美ほんのこっか?」

友美「でも、そのことを怒っているんじゃないの」

隆 「(声を上げ)相手は誰よ!?」

友美「たかさん、こんなところで大声出さないで」

隆 「・・・・・」

友美「やがては由美もお母さんになるんだから、ちゃんと

  親としての責任を果たせる人間になってほしいの。

  わたしだってあなたを宿したときには親になれるか心配だった。

  でも生んでみてそれは自然にわかったの。

  大切なのは未来を見つめることだって。

由美「お母さん・・・・」

友美「私たちもそろそろ先々のことを考えないといけない歳なのね。

  残された時間をどのように生きるか。

  自分がこの世に生まれてきたことを祝福できるか?生れてしまってごめんなさいって思うのかで残りの人生が幸せかどうか決まると思うの」

隆 「由美もおいたちぐらいになればわかるち思う」

友美「由美は今を精一杯生きなさい」

    二人を見ている由美。

55・鹿児島中央駅

    市バスから降りて構内へ向かって走る由美。

友美(声)「50になった今、20代のころやりたかったことはなにか?夢というほどのことではなくても、できたらいいなって思っていたことを思いだしてみたの。それが、死ぬときに後悔だけはしたくないこと。そのひとつが結婚だった」

    改札口に立っている隆司。

由美「隆司!」

    その声に振り返る隆司。

由美「(荒い息で)はあはあ・・・結婚しよ」

隆司「!?」

由美「わたしあなたの子供産む」

    二人の時間がとまった瞬間。

    由美の手と隆司の手が繋がる。

56・ひろ子の料理教室

    ひろ子に家庭料理の方法を教えてもらう由美。

    その隣に友美の姿。

57・りかの会社

    広いオフィスの奥にりかのデスクがある。

    若い部下を前に激を飛ばしているりか。

58・隆の会社

    会議室で鶴丸城の図面を広げて説明している真之介。

    その傍には川上と社長の大山。

    通路で出会った隆が真之介とおちゃらける。

59・枕崎・火の神公園

60・佐根森酒造の醸造工場

61・同・工場

    を部下(半数は女性)を数名連れて歩く佐根森。

佐根森「司君」

    そこにスーツ姿の隆司がいる。

隆司「はい。社長」

佐根森「明日おいと付き合わんか?」

隆司「し、社長とですか?俺、いやわたしはそんな趣味は・・・」

佐根森「ばか!仕事にきまっちょっどが。男は興味はなか!」

62・同・社長室

    デスクの引出から二枚の写真を取り出して見る佐根森。

    その写真は佐根森家の家族の集合写真である。

    一枚は若い頃、妻と赤ん坊(娘)を抱いた佐根森。

    二枚目は佐根森の隣に寄り添う笑顔の女性(成長した娘)である。

    佐根森の瞳から流れ落ちる一筋の涙。

佐根森「(呟く)愛する者はみな我のもとより去る・・・・か」

    デスクに滴が落ちる。

    そこにドアのノック。

佐根森「はい」

    涙を拭く佐根森。

    入室してくる女性秘書。

女性秘書「社長、明日の桜島酒造様との経営会議はどなたと?」

佐根森「うむ。わたしと司君で行く」

女性秘書「司?・・・あの、専務か常務はご同行されなくてよろしいのですか?」

佐根森「大丈夫、あいつと一緒でよか」

63・鹿児島市街地(翌日)

    目覚め行く街並みに朝陽が照り付ける。

64・桜島酒造本社ビル

65・同・エントランス

    入ってくる佐根森と司。

    受付係りが案内する。

66・同・会議室

    入口に向かって背を向けている桜島酒造の桜社長。

受付係り「こちらでごさいます」

    来る佐根森と司。

    司はどちらかというと鞄持ち。

佐根森「おはようございます。佐根森です」

    振り返る桜。

    まだ40代前半の若くどこか幼さが見え隠れする。

桜 「(冷たい表情で頷く)・・・・」

    桜以外誰も居ない会議室に佐根森も表情が重くなり。

佐根森「今日は経営会議の予定では?」

桜 「(冷たい口調で)家族会議だよ」

67・有馬家・リビング

    掃除機をかける由美。

    その隣でテーブルを拭いている友美。

    掃除機を停止する由美。

友美「隆司さん、佐根森酒造で働くことになってずっと枕崎だけど

  由美は大丈夫?」

由美「土日はこっちに居るし問題無いよ」

友美「あんたまで会社辞めることなかったんじゃない?」

由美「お母さんも本当はわたしが帰ってきてほしかったんでしょ?」

友美「図星かな」

由美「彼、真面目に働いてるみたいだから。

それに佐根森社長のとこなら安心できるし」

68・桜島酒造・会議室

桜 「それが安心できんのです。うちの馬鹿息子にはほとほと

  参っておりましてね、将来この桜島酒造を背負ってもらわなきゃならんというのにまったく帝王学に興味が無い。どうしたもんかと悩んでいた矢先、そこに飛び込んできたのがお宅の娘さんとの結婚話だった。わたしはなんとしても息子に後を継がせたい。息子のためにもわが社の将来、ひいては佐根森酒造の将来にもこの縁談は結ばなければならないと思います。もちろんわたしはまだまだ現役で頑張りますが

  佐根森さんは社長のお仕事はもう長くは無いでしょう?」

佐根森「それは買収ということでしょうか?」

桜 「あなたの会社とわたしの会社は特許権などをめぐって先代から長い間法廷闘争を重ねてきました。この機会に合併をお考え頂けないでしょうか?お互いの将来のために」

    佐根森の隣でじっと耐えている隆司。

佐根森「・・・・」

桜 「結婚式まで一か月。新しい命も誕生します。企業も進化していかなければ鹿児島の発展も無い」

佐根森「・・・将来のため・・・」

桜 「なにごとも思い切ってやるのが先代からの流儀じゃなかったんですか?佐根森社長」

佐根森「・・・・・・」

    互いに無言の静寂な時間が過ぎてゆく。

    微動だにしない佐根森。

69・有馬家・リビング

    夕食をとっている隆、友美、由美、隆司。

隆 「隆司君、仕事のほうは順調ですか?」

隆司「はい。おかげさまで」

隆 「鹿児島の焼酎は世界に誇れるもんやっでな。きばいやんせ」

隆司「きばい?やんせ?」

由美「がんばれってこと」

友美「(時計を気にして)そろそろ真之介が来る頃なんだけどな」

    その刹那、玄関のチャイムが鳴る。

    ♪ピンポ~ン。

    友美が向かう。

    来る真之介。

真之介「いや~みなさん。こんばんは!」

    差し入れを出す真之介。

真之介「○○のさつま揚げと(隆に)兄さんには焼酎」

隆 「おっ!桜島酒造の紺碧の桜島やらいよ」

真之介「今度うちで桜島酒造のCMとれたんでサンプル」

隆 「鶴丸城はうまくいっちょっとけ?」

真之介「構想はね。あとはスポンサー次第だね」

由美「(隆司に)真之介おじさんはCMプランナーなの」

真之介「まだ独身だよ。おじさんはないよ~」

由美「じゃあ、真之介兄さん」

友美「おじさんでいいのよ」

真之介「隆司君と由美ちゃんの結婚式は2か月後だったよね?」

由美「よろしく」

真之介「来月この桜島酒造の息子が佐根森酒造の娘さんと結婚式だそうだけど」

隆司「はい」

真之介「どういうわけかみんな呼ばれてるんだって?」

友美「世間は狭いわね」

隆司「(少し気が重い)・・・・」

友美「(隆司を気にして)具合でも悪いの?」

隆司「いえ。佐根森社長のことを思うと、なんだか可愛そうになって・・・たった一人の娘さんを嫌な相手の息子に嫁がせるなんて、俺が親だったら絶対に反対です」

友美「(隆司に)あなたも大人になってきたわね。

(皆に)そう言えばひろ子が縁談を壊したいって相談があって、

  そのときにはわたしには関係ないって思ってたけど、いま思うと真剣に相談に乗ってあげればよかったかなって・・・」

隆司「結婚する二人には責任はありません。問題は結婚を利用して企業買収を企んでいる桜社長のほうです。佐根森社長の気も知らないで一方的に押しつけやがって!」

隆 「薩摩男児の風上にもおけん奴じゃ!」

真之介「うちのスポンサーを悪く言うのはどうかと」

隆 「そいとこいとは話が違ご!」

友美「政略結婚?」

隆 「しかし、おいたちが一企業の経営戦略に口を出せる立場じゃなかしな。ここは我慢じゃなかかね」

友美「こういうときに助け合うのが家族よ!」

    友美はある決意を秘めた表情に。

70・結婚披露宴会場・ロビー

    続々と入場していく礼服の招待客。

    金屏風。

    「桜・佐根森ご両家」の名札。

    待合席に踏ん反り返っている真之介。

    そこに来る礼服のりかとひろ子。

りか「真之介!」

真之介「りかさん!」

りか「優ちゃんにお呼ばれ~」

真之介「佐根森社長も好きだね~どうせ宴会要員でしょ?」

りか「失礼ね!佐根森酒造はうちのクライアントでもあるのよ」

ひろ子「ところで友美たちは?」

真之介「もう来てますよ」

    来る大山と川上。

川上「おう、米田!こんなところで油売ってんじゃない」

    そこにタキシードの新郎、桜紘一郎が禧三郎とやってくる。

桜 「紘一郎、こちらが今度うちのCMを作って下さる薩広社の

大山社長だ。ご挨拶なさい」

紘一郎「本日はありがとうございます」

大山「本日はまことにおめでとうございます!」

川上「ご立派な息子さんで」

桜 「まだまだ未熟者ですが何卒よろしくお願い致します」

大山「今後ともわが社をご贔屓下さいませ」

    去る桜と紘一郎。

    若いスタイルのいい女性客らに見とれて、ぼ~としていた真之介に川上が一言。

川上「米田!中に入るぞ!」

    ひっぱられて会場へ向かう米田。

    見送るりかとひろ子。

71・同・会場

    指定された円卓に座っている隆、由美。

隆 「由美、友美はどけいった?」

由美「さっきまでいたのに」

72・新婦控え室

    ウェディングドレスに身を包んだ佐根森英恵が座っている。

    来る友美、りか、ひろ子。

友美・りか・ひろ子「おやっとさぁです!」

英恵「あの~どなた?」

    3人の後ろから優希が現れる。

英恵「お父さん」

佐根森「ちっとばっかい余興を頼んだ。今更お前たちに反対しても仕方がなか、おいも男じゃっでけじめはきちんとつけにゃならんでな」

73・披露宴会場

    高砂にいる英恵と紘一郎。

禧三郎「皆さん、本日は無礼講です。どんどん楽しんでください!」

    スポットライトが余興ステージに照らされる。

    三味線の弾き語りで着物姿のリカが登場。

    陽気なお囃子にのって着物の友美とひろ子の演舞が始まる。

    真之介「りかさんにひろ子さん?」

    隆 「友美!」

    途中から佐根森が奇抜な半裸状態の格好で登場。

    拍手と笑いが場内から沸く。

    佐根森酒造側の席からは動揺の声もする。

    見ている英恵と紘一郎。

    恥ずかしがる英恵。

    呆れ顔の禧三郎。

    ひととおり演舞が終了すると舞台から降りずにマイクを取り出す友美。

友美「今日は桜社長から無礼講の御札を頂きました。

英恵さんお父さんの演技はどうでしたか?いままでこんな崩れたお父さんを見たことがありますか?」

英恵「(首を左右に振る)・・・」

友美「愛する娘のためには例え一企業の長であれプライドを捨てて

  人前で振る舞える度胸はこの人ならではです。

  では次に桜社長、ご一緒に踊って頂けますか?」

桜 「バカなことを言うな!出来るかそんな恥さらしなこと」

ひろ子「ならば仕方ありません。司君出てきて」

    舞台に上がる隆司。

隆司「俺はここに居る有馬家のみんなとその友人に助けられました。佐根森社長はほとんど無職の自分に仕事をくれました」

由美「隆司・・・」

隆司「ときには厳しく、でもとても優しい親父みたいな社長です。

   この前、社長と桜社長の話を聞いていて社長には2種類の人

があるってわかりました。人の幸せを考える人と他人や自分の身内を利用して会社の利益しか考えない人です」

ひろ子「社長、この結婚が将来ご自分の利益につながる政略結婚ということは初めからわかっていました。わたしも桜島酒造の出資で料理教室を開かせてもらってますけれども、いつも気になっていたのが収益の使い道が全く不明なんです。

   なにを聞いてもお取りあげにならないのでいつか問いただそうと思っていました。それに、先日この縁談を自ら壊すにはどうしたらいいか相談にきましたよね?」

大山「桜社長、そうなんですか?」

りか「この結婚式自体がイミテーションなんじゃないのですか?」

真之介「パフォーマンスだったの?」

川上「だとしたらこのすごい無駄遣いだ」

りか「税務署から査察が入ったそうですね?」

ひろ子「さすがリカ、税務署にまで顔が効くんだ」

りか「(ひろ子に囁く)税務署にもいい男が居てさ」

ひろ子「持って生まれた才能ってどこで活かされるかわかないものね」

友美「桜島酒造が100億の赤字を抱えていることくらいりか筋でぜんぶわかってんだから」

隆 「(憤慨して)しょ、所得隠し!」

桜 「(怒号して)君たちは今何をしてるかわかってるのか?

  大事な結婚披露宴だぞ!場をわきまえたまえ!!」

佐根森「やっでこの場でしか言がならんこっを話たとよ。

  みんなに披露すっために。やっで披露宴ち言わよ!」

紘一郎「(禧三郎に)父さん、もう茶番はやめよう。この人たちの言う通りだ。嘘はつけないよ。この結婚式も所詮は税金対策だしね。俺も口止めされててどうしたらいいか迷ってた。

   でも、英恵を好きになったのは会社の為じゃない。

   本当に好きなんだ。結婚したらふつうのサラリーマンになってふつうの生活をしようと思ってた。許して父さん」

禧三郎「紘一郎!?」

    紘一郎をじっと見つめている英恵。

紘一郎「これから生まれてくる子供には贅沢なんかよりも家族の大切さを知ってもらいたいんだ」

佐根森「紘一郎君、英恵。こげな親父やっどん、堪忍しっくいやい。(英恵に)母さんを早くに亡くしてお前には苦労をかけっぱなしやったで第二の旅立ちには悔いのない人生にしてやりたいちお前だけは死んでも守ってやりたかったとよ」

           英恵、目が潤んでいる。

           突然、隆が竹刀を持ったふりで奇声をあげながら。

      隆 「もう、我慢ならん!きえええっ!」

    薬丸自顕流の構えをしながらいきなり桜社長の前にとびかかる。

    驚いて腰を抜かす桜。

桜 「な、なんだね、君は?」

隆 「御社の紺碧の桜島まこち美味しかったです!チェストォ!敬天愛人!常に尊敬の念を忘るるべからず!!西郷先生に学ぶべし!」

桜 「?!」

友美「(苦笑して)たかさんったら!」

    あちゃ~という顔の由美。

74・帰り道(夕方)

    並んで歩く友美、りか、ひろ子、由美、隆、真之介、隆司。

友美「桜社長も子供の頃辛いことが多かったみたいね。

  親が離婚結婚の繰り返し、酒造会社の御曹司っていうことで

  強引に帝王学を学ばされて自由の利かない少年時代を送ったらしいのね」

ひろ子「その反動が自分の息子にも影響したってことね」

真之介「いや~まさかまさかの展開でとんだ披露宴だったね」

リカ「でもわっぜ面白かった!」

    携帯電話が鳴り見ると。

りか「佐根森社長からだ(とって)もしもし、優ちゃん!」

    一同から少し離れて話し始めるりか。

ひろ子「リカったらずるいな。もうスポンサー見つけたみたいだし。わたしの料理教室もこれで終わりね~どうしよう?」

友美「ひろ子なら自分で始めたら?セレブなんだし」

ひろ子「それもそうね~生徒も居るし」

隆 「なんちゅてん薬丸自顕流が効いたでやね」

由美「お父さん、わたしの結婚式には今日みたいな真似は

しないでよ!」

         隆 「?」

隆司「大丈夫だよ。なにかあったら俺が守る」

友美「(隆司に)あなたを助けたのは誰だったかしら?」

75・高台(夕方)

    高台から夕陽の沈む鹿児島市街地を眺めている友美、隆、

    りか、ひろ子、由美、真之介、隆司。

    由美はお腹をさすっている。

由美「夕陽が綺麗!「(お腹に)この子が生まれて大人になってもずっと綺麗な夕陽が見れたらいいね」

友美「この子が50歳になってもずっと鹿児島の夕陽は綺麗だよ」

    夕陽を眺め続けている一同。

76・大きな夕陽

    鹿児島市街地を真っ赤に染める大きな夕陽。

    赤い桜島。

77・エンドロール

※コピーの関係で段落がおかしくなっておりますがご了承ください。

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