えんぴつの神様  尾上朋子

2014年09月24日

高校3年の時、全国模試を受けた。

全くと言っていいほど答えが解からなかった私は
とにかく答えを埋めようと、
問題も読まずにえんぴつに番号を描いて
コロコロと転がし止まって出た目の数字を
マークシートで塗りつぶし
どうにか事なきを得た。


模試を受けたことも忘れたある日、
いつもはクールな担任が
浮足立ってクラスに入ってきた。


「今日、皆に重大発表がある!!
なんと!
このクラスから全国模試の日本史で
全国100番以内に入った者がいる!!」

「おぉぉーーーっっ!!」
とクラス中がどよめいた。
私も
「おぉぉーーーっっ!!」
と誰だかわからないが
トックラ(トップクラスの略)を差し置いて、
このボンクラ(凡人クラスの略)からそんな快挙を成し遂げた英雄に歓声をあげた。

クラス全員が注目する中、先生が言った。
「前田!!(※私の旧姓)」

「えぇぇぇええ!!」皆が言った。
「えぇぇぇええ!!」私も言った。

どのテストでそんな快挙を成し遂げたのか、とんとわからないのだ。
答案を返されても「こんなの受けましたっけ?」という感じなのだ。
ほどなくして『あ!えんぴつコロコロ!!』と気が付いたが、
クラスの盛り上がりようは、とどまる事を知らず
あっという間に『歴史の前田』という誉れ高い異名がついた。

 

その3日後。

あの日とは比べ物にならないくらい
重い足取りで担任がクラスに入ってきた。

「今から先週の校内実力テストを返す」
ため息をつきながら、先生は
「点数によって愛の注入をするから覚悟するように!!」
と言った。
『愛の注入』とは、いわゆるあの黒い冊子の名簿表で
点数によって頭をはたかれるのだ。
点数によって、はたかれ度合いが違うのだ。
生徒は、はたかれる音の大きさで
『あいつ、だいぶ低い点とったなぁ』とか、いらぬ推測をし合うのだ。

 

平均点以上の生徒は、もちろん はたかれない。
だいぶ強い音を立てながら頭をはたかれ男子生徒が答案用紙を
手にして席へ帰ってくる。
ほとんどの女子がはたかれるのを回避している。
「前田」
私の番だ。
誰もがあの伝説と言っていい3日前の快挙を
思い浮かべ
クラス中の視線を一点に集め
先生の元へ言った。

先生は今まで見せた事もないくらい
深く深くため息をついて
クラスの誰もが受けた事のない
名簿表の背表紙で私の頭をはたいた。

「えぇぇぇええ!!」皆が言った。
「えぇぇぇええ!!」私も言った。

点数は3点だった。
もちろん、100点満点で。

『穴があったら入りたい』とは、今まさにこのことだ。
だが、それが私の本当の実力だった。

あれ以来、私はえんぴつの神様を見た事がない。
えんぴつの神様といえど、努力をしない者は見捨てられるのだ。
それが世の中のルールなのだ。

だが、えんぴつの神様に見捨てられても
死んでしまいたいほど恥ずかしかったあの時の話が
大人になった今では
『笑ってもらえる鉄板ネタ』
になっている。

それでいいのだ。

えんぴつの神様。
笑えるネタをありがとう。

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