「9.11(2001年9月11日)』竪山博之

2014年09月16日

IMG_1211 日に日に悪化する二日酔いのようだと苦しんだ。三日目がピークで、そこから徐々に恢復するのだが、一週間の休薬の後、また投薬(通院での点滴)を受ける。これを12回続けた。

 髪がごっそり抜けることはわかっていたので、ウイッグを準備した。

 満員電車では疲労も大きい。当時、豊島区上池袋にあった癌研究会病院へは、世田谷の家からタクシーで往復した。

 食欲をそそるはずの、特にご飯の炊ける匂いは、吐き気を催させる。結局、ゼリーなら食べられることがわかった。

 アメリカ同時多発テロ事件、いわゆる9.11は、そんなさなかに起こった。抗がん剤の副作用がピークを迎え、苦しいはずの妻も、テレビの中で崩れ行くワールドトレードセンターを食い入るように見つめていた。「この人たちに比べれば、私はまだ楽かも」そう呟いた。

 翌々年、妻を看取った朝、まるで終戦を迎えたような気持ちだった。喪失感という、新たな敵との戦いが始まったことなどつゆ知らず。

 翼をもがれたような苦しみに、9.11など、まさに対岸の火事であった。

 その後しばらく、9月11日といえば、抗がん剤に苦しむ前妻の姿が浮かぶものであったが、新たな人生が、そんな記憶を埋めてゆく。

 多忙で、5歳になった子供ともろくに遊んでやれないが、今、私は私の人生で最も平和な時間を生きている。

 鹿児島へ戻り8年になる。

 

*早くから準備しておりましたのに、アップするのを失念しておりました。読者の皆様には失礼いたしました。

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