「かごしま映画ものがたり」第3回 長野泰英

2014年08月01日

みなさん、おやっとさぁです。

地元から上京して活躍している鹿児島出身の映画人や俳優、タレント、歌手は多く、また彼らも地元愛を持っており故郷で仕事があったりした際は特別な気持ちを持って接することも少なくないはず。

今回は全国で活躍中あるいは活躍した鹿児島の映画人を取り上げてみようと思い誰がいいか迷いました。「白い巨塔」等の巨匠山本薩夫監督もいい、「桜の園」等の中原俊監督もいい、プロデューサー山本又一郎さんや脚本家の武上純希さんや右田昌万さんもありだ。しかし、待てよ。身近なところにいるではないか。

そう思って、ここぞとばかりに我が弟を取り上げてみることにしました。

弟の名は「長野泰隆(ながのやすたか)」、誰それ?何やってる人?と思われるか知れませんが職業はキャメラマン※です。私とは八つ年下で錦江湾高校をへて鹿児島経済大学(現・鹿児島国際大学)卒業と同時に上京してCM関連の仕事に就きアシスタントから撮影技術を学び数年後一本立ちし数々のCMやVシネマ等の作品を撮り続けました。やがて日本映画撮影監督協会の撮影監督の称号を取得。念願の劇映画へも進出します。

本格的な劇映画は「イカレスラー(04・河崎実監督)」が最初で同監督の「兜王ビートル」「コアラ課長」「かにゴールキーパー」等も手掛け、「富江VS富江」「片腕マシンガール」「ロボゲイシャ」「富江アンリミテッド」「七つまでは神のうち」「お姉チャンバラ2」etcといったSF、サスペンス、ホラー系等様々なジャンルを手掛けています。

劇映画のみならずテレビドラマも手掛けています。映画「電人ザボーガー(11・井口昇監督)」では兄である私の特撮好きが彼のカメラワークにどこまで影響したのかわかりませんが「兄貴が教えてくれた特撮の精神を思いっきりぶち込んだ作品」と語ってくれたのは嬉しかったです。

その後も今や人気上昇中のアクション女優武田梨奈さんの主演作「デッド寿司」や現代アーティストの村上隆監督作品「めめめのくらげ」今年に入っては角川映画「ライヴ」、これから公開される楳図かずお監督「マザー」や柳楽優弥主演の「最後の命」等社会派ドラマも担当しています。

その弟ですが実は高校時代まで映像という世界にはまったく興味がなく空手や野球好きのスポーツ少年でした。変化が起きたのは大学時代、私が社会人になっても自主映画を撮り続けていたりして映画や特撮に入り浸りだったせいかそれが影響していつしか弟の将来の夢を決定付け突然「映像の世界に入りたい!」と言い出し友人らと自主映画を撮り始めたのです。

アルバイトも地元映像プロダクションに出入りし始め大学卒業までそんな調子でした。大学も卒業が近くなり、ある日「俺は東京へ行く!」と家を飛び出すように上京しました。私は「一人前になるまで帰るな」と彼を送り出しました。その私の期待通り彼は仕事に打ち込みキャメラマンとして今日まで凡そ50本の映画、Vシネ、テレビドラマに携わってきました。(その他のCM作品やVP等はカウントしていません)

撮影部の長として時には大いなる挫折や苦悩もあり幾度も彼の悩みを耳にしてきました。離れて暮らしているので電話で悩みを聞くことしかできませんでしたがそんな会話の中で彼が必ず熱弁していたことがあります。

それは低予算の邦画でも洋画の大作映画と同じ入場料を払って観にきてもらう作品を作るためにスタッフは必死で取り組んでいる。日本は特に予算を技術部門に組み入れようとしないところが諸外国との差を生んでいると言います。

撮影にはカメラだけでも助手を含めて3~4名が周りに就きます。キャメラマンと計測やフォーカス、アシストなどです。そう考えると一本の作品に現場はひと学級分のスタッフが必要なのも頷けます。昔から現場は男所帯というのが定番でしたが弟はあえて女性を助手につけるそうです。それは俳優や他のスタッフに対しての計らいで女性スタッフがレンズの周囲に居ることで落ち着けるそうで現場も女性が多いことで賑やかになるといいます。また女性特有の気遣いなども現場には欠かせない要素だからです。

かといって日本映画の制作環境はけっして満足のいくものではなく近年では1億以下どころか5千万以下の低予算作品も多く、それらはごく限られた日数で制作されなければならないのでそこで無理が生じスタッフ間に事故も多発しているといいます。

女性スタッフも風呂やトイレの無い場所で何日も泊まり込み徹夜で懸命にやっている中、ギャラは少なく辞める者や体調を崩す者も後を絶たない現実があります。好きだから出来るというだけでは産業として発展はしないし、粗悪な現場で良い作品は出来ないわけです。かと言ってどんなに予算の多い作品でも技術者自体のギャラは変化せず予算の多くはキャスト側に回ることも産業としてのインフラが未熟である証拠です。

そんな日本映画の現実を見て制作現場の構造と体質を根底から改善したいと弟は言います。わたしも同感です。

わたしの夢はいつか彼とタッグを組んで地産の劇映画を作ることです。

その為には鹿児島で東京と同じ土俵をつくる必要があります。だからわたしは鹿児島に映画やドラマの出来る土壌を開拓をしようとしています。

そして弟もまた作品で故郷鹿児島に恩返しをしたいと願っています。

 

※映像はキャメラマン、写真はカメラマンと業界では区別している。

 

PHOTO BY 長野泰隆

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