あの日のママさんのお言葉 尾上朋子

2014年06月24日

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今から25年前。
私はアメリカのシアトルに居た。
約一カ月のホームステイなのである。
それは高校3年生の夏。
キンチョーの夏なのである。

「アメリカに一カ月」と言うと
「すご~い!!英語出来るんだね!」
と勘違いされるけど、そうでは ない。
アメリカであろうが、フランスであろうが、イングランドであろうが、
パスポートとチケットさえ手に入れれば そこの国の言葉が出来なかろうと
誰でも行けるのである。

私も母のご乱心のせいで
「は?」
「アメリカ?」
「英語赤点ですけど?」
の訴えむなしく気がつけばアメリカ。
大事なことなので二度言います。
英語赤点。

母のご乱心は、初夏のある日妹の友人宅が『からいも交流』で当時田舎では
なかなかお目にかかれない『外国人』の受け入れを見て衝撃を受けた妹の
「〇〇ちゃんちはいいなぁ。ガイジンがおうちにいるんだもん」
が引き金だった。
妹「うちもガイジンをおうちに呼びたい!!」
母「お母さんも!!でも、うちは夏は仕事が忙しいからねぇ。
夏の受入れはちょっとねぇ。。。
はっ!!そうだ!!朋子!
あんた夏休み外国行ってきなさい!
そんで外国人と仲良くなって連れて帰ってくればいいが!」
おかん。
それ。ナンパ。。。
しかも、外国行ってって。。。
スケールでかい。。。。
しかも、赤点。

今になって思えば、からいも交流は冬場もしていたのだろうが、
思い立ったら吉日!!のB型おかんの行動は無駄に早かった。
ナンパ発言から約一ヶ月後には私はアメリカに居た。

初めて触れ合う外国人のホストファミリーはとても陽気で温かく
広い心で赤点英語力の私を受け入れてくれた。
私の英語力よりもむしろ、
ホストファミリーの日本語力と絵画力、
ボディランゲージ力を高めただけのような
楽しい一カ月はあっという間に過ぎていった。

お別れの日の前夜。
私は突然母のミッションを思い出した。

『日本人は敬意をこめて名前の後ろに「さん」が付く』
と思っているホストファミリーは
ホストファザーを「パパさん」
ホストマザーを「ママさん」と呼び合っていた。
多分私がホームシックにならないように少しでも日本文化を取り入れようとの
心配りだったのだろう。
英語が赤点の私の英語力で
「ママさんはスナックのママみたいなので変ですよ」
と伝えられようか?
否 無理。

私はママさんに
「ママさん。一ヶ月間とても楽しかった!
本当に本当にありがとうございます。
このご恩は一生忘れません。
お礼をしたいので是非とも日本に遊びに来て欲しいんですが。」
とつたない英語で一生懸命伝えた。

するとママさんは
優しい瞳でわたしを見つめながら
こう言った。
「トモコ。
私たちもあなたと過ごせてとても楽しかったわ。
日本人はシャイと聞いていたけど、ぜんぜん違うのね。
実際に付き合ってみると噂とはぜんぜん違うものだということを
私たち家族はあなたを通して学んだわ。
お礼を言うのは私たちのほうよ。
ありがとう。
日本への招待もとても嬉しいけど、今は行けそうにないわ。
もし、私たちを日本に呼んでくれるくらい今回のステイが
楽しかったのなら、いつかあなたが大人になって
アメリカ人が日本で困っていたら助けてあげてね。
それが私たちに対する恩返しになるわ。」

「それから、もうひとつ。
私たちに恩返しをしたいのなら
あなたもいつかホストファミリーになってみてね。
どの国の人でもいい。
一度でいいから、ホストファミリーになって誰かを受け入れて頂戴。
そうすれば、私があなたに『ありがとう』といった意味が
本当にわかるわよ。」
大粒の涙を流す私にママさんは
当り前のように日本流の約束ポーズ
『指切りげんまん』をしながら微笑んだ。
どんだけ私は日本文化をまき散らしたんだろう。
ママさんパパさんのおかげで私はアメリカが大好きになった。

あれから20年後。
私は初めてホストファミリーになった。
ラオスの高校生を受け入れたのだ。
たった一泊二日の受入れだったけれど
私は感動の嵐に包まれていた。
ママさんの約束が守れたことと、
あの日
お世話になりっぱなしの私に掛けてくれた
ママさんの『ありがとう』の意味が少しわかったような気がした。

そして先週は香港の大学生を受け入れた。
こういうご時世なので実は最初はちょっとだけ
どうしようか悩んだけど
ママさんの『実際に付き合ってみないとわからない』
という言葉を思い出し受け入れることにした。
学生たちは目を輝かせながら興奮して
『大好きなニッポンにやっと来ることが出来ました!』
と一生懸命日本語で私たちとコミュニケーションを取った。
私のあの日の英語力とは比べ物にならない。
彼女たちは見る物する事 すべてに感動と感謝を表した。

いろいろな政治の力で湾曲された情報が飛び交う中、
このような草の根交流はとても地道だけれども
こういうことの積み重ねが平和を導いてくれるのかなぁ。。。
と彼女たちと戯れる娘たちの姿を見て
「仲良き事は美しき哉」などと独り言ちながら
『あれから ちっとは 大人になったのかなぁ』と
遠いアメリカに住むパパさんママさんに感謝するのである。

※写真は輝北の鶴田製茶にて昔ながらのお茶摘み&釜煎り体験
 香港の大学生と娘たち

 

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